2026.06.15
フォトグラメトリを活用した3DCG制作事例|講演会用の歴史遺産資料映像
今回は、フォトグラメトリを活用した3DCG動画の制作事例をご紹介します。
近年、実物の質感をそのままデジタル化し、自由なカメラワークで見せられる3DCG動画のニーズが高まっています。なかでもフォトグラメトリ(=写真から立体物の3Dデータを作る技術)は、実写では難しい「対象を立体的に、あらゆる角度から見せる」表現を可能にし、製品紹介から文化財の記録まで幅広い分野で活用が進んでいます。
本記事では、絵画作品をフォトグラメトリで高精度に3D化し、講演会で使用する3DCG動画として仕上げた事例をもとに、制作の流れとポイントをご紹介します。3DCG動画の制作を検討されている企業のご担当者様の参考になれば幸いです。
フォトグラメトリを活用した3DCG動画制作の概要
ご依頼主 – 文化・美術分野で講演会の企画・運営を手がける企業様-
ご依頼主は、文化・美術分野における講演会の企画・運営を手がけられている企業様です。以前にも、江戸時代の絵師・円山応挙の襖絵を題材とした講演会用3DCG動画をJPCにお任せいただいており、今回が2回目のご依頼となりました。
ご依頼内容 – 講演会用3DCG動画の制作 –
前回作成した円山応挙の作品を題材とした3DCG動画がご好評をいただいたことを受け、今回は新たに、応挙の画風を意識した絵師・土岐済美の作品と、応挙作品とを比較する構成の3DCG動画の制作をご依頼いただきました。

研究・講演の場で、来場者に向けた視覚的なプレゼンテーション資料として活用されることを目的としたご依頼です。会場では実物の絵画を全員が間近で鑑賞することが難しく、また筆致や絵具の盛り上がりといった細部までは伝わりづらいという課題がありました。
そこで、絵画を立体的に3D化し、大画面で自在に見せられる3DCG動画として制作することになりました。
3DCG動画制作のポイント – フォトグラメトリで実現する絵画の立体表現 –
今回の映像は、フォトグラメトリで絵画を高精度に3D化し、それを3DCGとして仕上げた構成です。「平面の絵画を立体として、いかに自然に鑑賞体験へ落とし込むか」を意識しながら、絵具の盛り上がりや筆致の質感の再現、2作家の作品を比較するための条件統一など、細部まで丁寧に設計しました。
制作で意識したポイントは以下の3点です。
- フォトグラメトリによる絵画の精細な3D化
- 2作家の作品を同一条件で並べる比較表現
- デジタルアーカイブとしても活用できるデータ設計
フォトグラメトリを活用した3DCG動画制作の流れ
ヒアリング・スケジュール確認
はじめに、ご依頼内容の整理と、撮影対象となる作品・撮影日程の確定を行いました。前回の応挙作品の案件と進め方や撮影環境が共通していたため、着手は比較的スムーズに進みました。
今回は講演会の開催に向けたご依頼で、制作に充てられる期間は約2週間と限られていたため、納品日から逆算してスケジュールを組み立てました。
現地撮影
撮影では、Leica RTC360(3Dレーザースキャナー)と一眼レフカメラを併用しました。RTC360で点群(=対象の形状を無数の点で捉えたデータ)と画像を取得し、細部はフルサイズの一眼レフで多角度から補完撮影しています。
絵具の凹凸や筆致といった微細な質感まで捉えるため、さまざまな方向から丁寧に撮影を重ねました。
フォトグラメトリ処理
撮影した写真と点群データを、RealityCaptureというソフトで処理します。
複数の画像の位置を合わせるアライメント、立体形状を面のデータに変換するメッシュ化、表面の色や質感を貼り付けるテクスチャリングという工程を経て、絵画の表面質感を高精度に再現した3Dモデルを生成しました。
このとき、円山応挙と土岐済美の作品を同一の手法・条件で3D化することで、後の映像で両者の作風や技法の違いを視覚的に対比できる構成としています。


3Dアニメーション制作
生成した3DモデルをCG制作ソフトの3dsMaxに読み込み、カメラワーク(カメラの動き)・ライティング(光の当て方)・アニメーションを設計しました。立体的に動かすことで、平面の写真では得られない「回り込み」や「寄り」が可能になり、単なる写真とは異なる立体的な鑑賞体験を生み出しています。


平面の絵画を立体として見せるこの工程が、フォトグラメトリで取得したデータを「動画」として活かす中心的なパートです。
映像編集・仕上げ
3Dデータを映像として書き出す処理(レンダリング)を行ったうえで、映像編集・合成ソフトのAfter Effectsで仕上げます。
講演で使用する解説テキストやグラフィック、BGMを重ね合わせ(コンポジット)、講演会用の動画コンテンツとして完成させました。映像全体の色調・トーンの統一も、この仕上げ工程で調整しています。
フォトグラメトリを活用した3DCG動画の完成
完成した動画がこちらです。
チェックバック(確認・修正)を経て、講演会の日程に間に合わせる形で納品いたしました。約2週間という短納期での制作でしたが、前回の円山応挙の案件で培った撮影環境や制作の進め方を活かせたことで、短い期間でも品質を妥協せずに仕上げることができました。
文化・美術作品を高精度に3D化するという専門性の高い取り組みは、今回も「これまでにない試み」としてご好評をいただき、前回に続くリピートのご依頼につながっています。
CG MAKERSでは、本案件のような美術作品の3D化に限らず、製品紹介や展示会向けなど幅広いジャンルのCG動画制作を手がけています。
フォトグラメトリで3DCGを制作するメリット
3DCGは一からの手作業でつくることもできますが、実在する対象を扱うなら、フォトグラメトリを使うことで得られる利点が多くあります。
ここでは、フォトグラメトリで3DCGを制作するメリットを整理します。
※フォトグラメトリの仕組みや必要な機材、3Dスキャン・3DGSとの違いといった基礎は、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
関連記事:フォトグラメトリとは?3Dスキャン・3DGSとの違いや活用事例を解説
実物の質感をそのまま立体で再現できる
手作業のモデリングでは、実物の質感を一から作り込む必要があり、リアルさには限界があります。
フォトグラメトリは表面の凹凸や素材感まで立体データとして取り込むため、実物が持つ質感をそのまま3DCGに反映できます。現実の細部までリアルに再現できるのは、フォトグラメトリならではの強みです。
現物さえあれば図面がなくても3D化できる
手作業のモデリングや3D設計では、対象の形状を示す図面やCADデータが必要になる場合があります。
フォトグラメトリは現物を撮影するだけで3D化できるため、図面が存在しない美術品や古い製品、自然物などでも、現物さえあれば立体データを作成できます。設計データの有無に縛られない点は、フォトグラメトリならではのメリットです。
一から手作業でモデリングするより効率的に制作できる
3DCGを一から手作業でモデリングする場合、形状が複雑になるほど作り込みに時間がかかります。
フォトグラメトリは実物を撮影したデータをもとに3D化するため、複雑な形状や細かな質感を持つ対象でも、手作業のモデリングに比べて効率的に制作できます。制作の手間や期間を抑えられることは、コスト面でも大きく貢献します。
一度作ったデータを複数の用途に活かせる
フォトグラメトリは、実物を撮影して得た立体データをもとに3DCGを制作します。
この3DCGデータは一度の制作で終わらず、動画・静止画・VR・資料保存用のデジタルアーカイブなど、さまざまな用途に転用できます。実物の撮影は一度で済むため、データを使い回すほど投資対効果を高められます。
フォトグラメトリを活用した3DCG動画制作まとめ
今回は、絵画作品をフォトグラメトリで高精度に3D化し、講演会用の3DCG動画として仕上げた事例をご紹介しました。実物の質感を立体的に再現し、自由なカメラワークで見せることで、実写では難しい鑑賞体験を実現しています。
CG MAKERSでは、3Dレーザースキャナーを用いた高精度な撮影から、フォトグラメトリ処理、3DCG制作、映像編集・仕上げまでをワンストップで対応できる体制を整えています。文化財レベルの精細な3D化から、デジタルアーカイブとしての活用まで幅広くご支援できることが強みです。
フォトグラメトリを活用した3DCG動画・CG制作の外注をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。企画段階のご相談から、用途に合わせた最適な制作プランをご提案いたします。




